Pride of Wacom - ワコムの矜持

いかなる時も「創作への没入」を妨げない:
自己主張を削ぎ落とした先の、確かな存在感

目指したのはプロフェッショナルなデザイン

近年、ワコムでは新製品開発にあたり、ETCという取り組みを実施している。ETCは部門横断的に集まった有志から構成されるタスクフォース。日常業務で培った専門領域の知識と経験を集積し、特定の課題解決を図ろうとするものだ。13.3型フルHD有機ELディスプレイを採用し、ポータビリティを追求したWacom Movink 13の企画・開発でもETCが立ち上げられ、全社から8名のメンバーが参加した。

「すべてのワコム製品が大切にしているのは『紙とペンの体験』。特にクリエイターに向けては、アナログと遜色のない描き心地で、違和感なく創作に集中できるデバイスを理想としています」と語るのは、Wacom Movink 13のETCでプロジェクトリーダーも務めた小幡幸結。 プロダクトマーケティングが専門の小幡は、開発、マーケティング、セールスといった各部門とETCをつなぎ、製品の方向性を検討するというプロジェクト全体のまとめ役を担った。

この製品が目指したのはユニバーサルデザインではなくプロフェッショナルデザイン。万人が使いやすい優等生というよりも、創作の最前線を走るプロクリエイターから熱狂的に支持されるような、個性際立つ魅力的な異端児的存在だ。

「クリエイターの手を止めるな」

プロクリエイターやクリエイターを目指す美術系学生に受け容れられるという観点で小幡を中心としたETCメンバーが大切にしたポイント、それは「煩わしさを感じさせない」ということ。メインターゲットに据えたユーザーは、一日に8時間以上、長ければ10時間から12時間を創作活動に充てるような創作スタイルも珍しくない。長時間使用し続けられるためには、クリエイターの集中力を阻害しないことが何よりも重要だ。

「プロフェッショナルなクリエイターが求めるのは『没入できる創作環境』だと考えています。繊細な感覚を取り扱うクリエイターは、ちょっとしたことが気になるだけでも、閃きやアイデア を逃してしまう。デバイスやソフトウェアが原因となって創作への没入を止めてしまうのは、ワコムとしては最も避けなければならないことです」

クリエイターに煩わしさを感じさせないため、外観は極限までシンプルな方向で検討。「薄く」「軽く」「強く」というポータブルデバイスに求められる要素を高めながら、ワコムのロゴなどの目に映る要素をできる限り減らすことで、クリエイターの集中力を持続させるデバイスのあり方が追求された。また、「自由な創作スタイル」を可能にするため、平置きでも、角度を付けても、仰向けでも、抱えてでも、どんな姿勢でも無理なく創作に没入できるようなデバイスが企画当初から目指された。

小さな工夫とアイデア を積み重ねる

ディスプレイについても様々な工夫が取り入れられた。「私の専門はソフトウェア開発ですが、安定して動作するのは当たり前のこと。ここでは、実際に使う際の印象に直結するタブレット本体周りのことをお話ししましょう 」と切り出したのは、ETCメンバーであり、デバイス内で動作するソフトウェアの開発を専門とし、かつユーザーが設定で使うワコムセンターや機能の提案などを手掛ける 加藤龍憲。Wacom Movink 13では、クリエイターの集中力を阻害しないための、ありとあらゆる配慮が詰め込まれていると語る。

「ディスプレイには、長時間使用しても目に優しいことを証明する『アイケアディスプレイ認証』を取得した有機ELディスプレイを採用し、画面への映り込みやギラつきなど、クリエイターの疲労につながる可能性の高い要素は優先度を上げて排除しました。見た目と描き心地を両立させるために、これまでにない表面処理も施している。指紋が付きにくくなる『アンチフィンガープリント対応』も、集中力を持続させるために取り入れたものです。お気に入りのショートカットを割り当てられるタッチキーも左右一つずつ配置されているが、ディスプレイ上では目立つことなく、静かに存在しています。ケーブルに関しても、あらゆる使用シーンを想定し、長さや柔軟性も最適なバランスを実現。L字型のコネクターを採用したのも、取り回しがしやすく、作業スペースを最小化しようという狙いです。また、長時間の使用でもクリエイターの気を逸らさないよう、発熱量の制御にも細心の注意を払っており、これは消費電力を抑えることにもつながっています 」

こうした細かなアイデア の積み重ねが、時と場所を選ばずに閃きの瞬間を捉えるポータビリティの実現につながっている。

クリエイターの潜在的課題に思いを巡らせる

一見すると、過剰とも映るようなクリエイターに対する配慮の数々。ここまで徹底するのは「クリエイターに最高のペン体験を届ける」というワコムのこだわりがある。

「Wacom Movink 13の開発でも、試作段階でプロクリエイターの方々からも貴重なご意見をいただきましたが、そこから見えるのはすでに顕在化している 課題がほとんど。一方で、私たちが見つけるべき は潜在的な課題です。長時間使ったらどれくらい目が疲れるのか。どんな姿勢で使われるのか。集中力が削がれる要因はないか。『最高のペン体験』を思い描き、自分がクリエイターになったと仮定して、あらゆる要因を探っていくことが重要だと考えています(加藤)」

様々なペンが使えることも特徴のひとつ。GDペン*1とUDペン*2の両方に対応するのはワコム製品としては初めて。プロクリエイターの中には、アナログ時代に鉛筆やボールペンといったアナログ文房具に慣れ親しんでいた流れから、その特徴を色濃く反映したUDペンを好む方も少なくない。UDペンユーザーにとってもストレスなく創作に打ち込める環境を提供したいという想いが、ペンの選択範囲を広げるという仕様にも反映されているのだ。

*1 GDペン:ペンの筆圧などの情報を、ペン内部で一度デジタル値に変えてから交流磁界の変化でセンサーに伝える「GD方式」という技術を用いたデジタルペンのこと。
*2 UDペン:ペンの筆圧などの情報を 直接交流磁界の変化でセンサーに伝える「UD方式」という技術を用いたデジタルペンのこと。

Move + Ink:ワコムの新たなブランドが描く未来

ワコムとしての全く新しいプロジェクトから生まれたWacom Movink 13。その完成度の高さには、ETCメンバーとしてこのチャレンジを牽引した二人も自信を滲ませる。

「クリエイターが自分の慣れ親しんだ創作環境を、これまで以上に簡単に、どこへでも連れ出せるようになった。これがWacom Movink 13が持つ最大の魅力。いつでも、どこでも、創作に没入できます(加藤)」

「Movinkは、Move(動く)とInk(インク)の造語です。この名前からもわかるように、ポータブルで使ってもらうことを前提としています。同じ場所で何時間作業するというシーンだけではなく、気分転換も含めて別の場所で描いても集中力を切らせることがないというのがコンセプトです。実際に、飛行機や新幹線、フェリーの中でもこの製品を使って絵を描いているというプロクリエイターからの声もいただいています。まさに私たちが期待していた使われ方が実現していると聞いて嬉しくなりました(小幡)」

ワコムにとっての新しいブランドであるWacom Movink 。小幡が思い描くのはどのような未来像なのか。

「このブランドを育てていくためにも、ワコムとしては初めて、クリエイターから直接フィードバックをもらえるシステムを導入しました。ダイレクトに反応を聞かせていただくことで、さらにクリエイターのためになる製品を生み出せると考えています。プロクリエイター向けの製品では『創作の手を止めない』『アイデア を増幅させる』『煩わしさを与えない』といったポイントを重視していますが、特にポータビリティを重視したWacom Movink 13では『創作の閃きやアイデア を逃さない』ことに重きを置いています。この製品を通じて、ワコムが大切にしている世界観を体感していただきたいと思っています(小幡)」

使い手を煩わせかねない主張を限界まで削ぎ落とした結果、プロクリエイターに対して唯一無二の存在感を示すポータブルデバイスへと仕上げられたWacom Movink 13。時間、空間、環境を選ばないこの製品によって、どんなクリエイティブに出会えるのか。創作のさらなる可能性に期待しよう。

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